2011/07/31

「船のうえ 夜」

夜の海
聞こえるのは波を切る音のみ

遠い海にじっと目を凝らす
何も見えぬ、無限の拡がり

それにしても何年ぶりだろう
こんなに多くの星を見たのは


吐いた煙草の煙が
音もなく闇に吸い込まれた

「船のうえで」


やわらかな潮風が体を通り抜ける

甲板の椅子に座って
時折、風でページをとばされそうになりながら
「老人と海」を読んでいる

ふと上を見やると、夕日色に染まった雲

刻々と色を変え
刻々とかたちを変える

近いものほど早く
遠いものほどゆっくりと

不思議なほど穏やかな気分だ


一人、海を行く